パウエル講演後のドル売り続く ドル円は135円前半まで下落=NY為替概況

 きょうもNY為替市場は前日のパウエルFRB議長の講演を受けたドル売りが続き、ドル円は135円台前半まで下落した。議長が12月FOMCで利上げペースを縮小させる可能性があるとのシグナルを発してから、ドルは急速に下落。ドル円はきょうの下げで一段安の展開を見せ、明日の米雇用統計を受けて、134円台半ばに来ている200日線を試す展開になるか注目される状況。

 この日は11月のISM製造業景気指数が発表され、49.0と景気判断基準である50を割り込んだ。前日のパウエル議長の講演を追認する内容だが、米株式市場が下げ幅を拡大する反応を見せたことがむしろ、ドル円を圧迫していた面もありそうだ。米株式市場は利上げペース縮小よりも景気後退を意識したのかもしれない。

 また、FRBがインフレ指標として参照している10月のPCEデフレータも発表になっていたが、前月比の伸びが市場予想を下回っていた。ただ、個人消費支出は伸びが加速しており、FRBが利上げを継続する中でも、景気後退を引き起こすことなくインフレを抑制できるとの期待を生じさせる内容ではあった。

 ただ、一部からは、今回のパウエル議長の講演後のドル下落は過剰反応との声も出ている。あくまで、議長のメッセージの核心は12月FOMCの部分ではなく、頑強に高いコアインフレであったと指摘。そのため、前日の講演を材料にしたドル売りには限界があるという。本格的にドル売りを進めるためには、今後発表になるインフレ指標と米雇用指標の数字を確認する必要があるとしている。

 ユーロドルは1.05ドル台を回復。本日の上げで200日線を上放れる展開を見せており、明日の米雇用統計を受けて、さらに上値を試しに行くか注目される。

 ロンドン時間に10月のドイツ小売売上高が発表されていたが、前月比2.8%減と名目、実質ともに減少に転じていた。市場からは、小売売上高を圧迫していたのはインフレだけではなく、景気減速もあるとの指摘が出ている。

 少なくとも小売部門においてのドイツの個人消費は、第4四半期を後手に回ってスタートした可能性があるという。今後発表になる11月、12月分の数字が10月の水準で安定すると仮定したとしても、10-12月期(第4四半期)は第3四半期の前期比0.9%減に続き、2.4%程度の減少が想定され、落ち込みはそれ以上になる可能性も高いという。

ドイツ小売売上高(10月)16:00
結果 -2.8%
予想 -0.7% 前回 1.2%(0.9%から修正)(前月比)
結果 -6.6%
予想 -2.8% 前回 -0.3%(-0.6%から修正)(前年比)

 ポンドドルは一時1.23ドル台まで上げ幅を拡大する場面が見られた。きょうの上げで200日線を上回って来ており、テクニカル的にも上昇シグナルが点灯しそうな気配となっている。更なる上値追いも期待されるところではあるが、それはあくまで、今後の米経済指標などを受けて、市場のリスクセンチメントが高まるかどうか次第だという。ポンドは主要通貨の中では比較的景気に敏感な通貨の位置づけがある。

 もっとも、ポンドドルの場合は英固有の材料よりも、米国の材料に動きを依存させている。その意味でも明日の米雇用統計に対する市場全体の反応は注目される。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美