ドル買い一服 来週のFOMCと米CPI待ちで手をこまねいているとの声も=NY為替概況

 きょうのNY為替市場はドルの戻り売りが強まり、ドル円は一時136円台前半に下落した。特段のドル売り材料は見当たらないが、このところの急速なドル買い戻しに一服感が出ていたようだ。

 為替市場は12月に入ってから、ドルの再評価が強まっている。しかし、商い自体は静かだという。市場の多くは来週のFOMCと米消費者物価指数(CPI)の発表を待っている状態で様子見の雰囲気が強く、誰もが手をこまねいているといった状況だとの声も聞かれる。

 各国中銀は利上げのスピードを減速させようとしており、利上げプロセスは底打ちに近づいていると見られている。今年はFRBが利上げに積極的だったことから、ドルは力強い動きが続いていたが、FRBはここから利上げペースを減速しようとしており、来年の上半期での利上げ打ち止め観測も高まっている中で、短期的なドル下落は理にかなっているという。

 ユーロドルは1.05ドル台を回復。ロシアのプーチン大統領が「世界で核戦争のリスクが上昇しつつある」と述べたことで瞬間的に売りが強まる場面が見られたが、一時的な反応に留まっている。

 ロンドン時間に10月のドイツ鉱工業生産が発表になり、前月比で0.1%の減少となったものの予想ほどではなかった。ただ市場からは、ドイツ経済は崖からは転落していないが、景気後退に向けて滑り出していることを示唆しているとの評価も出ていた。エネルギー集約型でないセクターが予想以上に好調だったことなど、いくつかの明るい兆しはまだ見られるが、新規受注の減少と在庫の増加は将来の生産にとって良い兆候ではない。輸出も冬には弱まりそうな中、エネルギー価格高騰の中で個人消費もさらに打撃を受ける可能性があるという。ただ、ドイツ政府の財政刺激策は、景気後退を緩和し、景気後退をマイルドにするのには十分な量だとも述べている。

 一方、第4四半期のドイツ経済はマイナス成長を回避する可能性が高いとの評価も出ている。政府の救済策や天然ガスが配給性になる可能性が低くなったことはドイツ経済の見通しを良くしているという。ただ、こちらも、ドイツが景気後退を回避できることを意味するものではなく、急激な利上げが世界経済に顕著なブレーキをかけており、来年前半のドイツ経済は縮小する可能性が高いと指摘している。

ドイツ鉱工業生産指数(10月)16:00
結果 -0.1%
予想 -0.5% 前回 1.1%(0.6%から修正)(前月比)
結果 0.0%
予想 -0.8% 前回 3.1%(2.6%から修正)(前年比)

 ポンドドルも1.22ドル台を回復。本日の200日線は1.2130ドル付近に来ているが、きょうの上げでその水準は維持されている格好。

 現在の英中銀の政策金利は3.50%だが、市場からは、英中銀は来週の年内最後の金融政策委員会(MPC)で0.50%ポイントの利上げを実施した後、3.50%で今回の利上げサイクルのピークを迎えるとの見方が出ている。

 きょうはカナダ中銀が0.50%ポイントの利上げを実施し、利上げ打ち止めの可能性もほのめかしていた。英中銀も同様の動きを取る可能性があるという。来週に0.50%ポイントの利上げを実施すれば、この1年で英中銀は累計で2.75%ポイント引き上げたことになる。相応に積極的に行動したと言えるという。また、来年の上半期は金利が据え置かれ、後半に緩やかな利下げを見込んでいるとも述べている。

 序盤にカナダ中銀の政策委員会の結果が発表され、0.50%ポイントの利上げを実施し、政策金利を4.25%とした。市場では利上げは確実視されていたが、利上げ幅は0.50%ポイントと0.25%ポイントで完全に見方が二分していた。

 市場は、カナダ中銀は政策金利を4.25%まで引き上げて、今回の利上げサイクルを一旦停止すると見ている。今回の0.50%ポイントの利上げで市場が期待しているターミナルレート(最終到達点)に到達した格好。ただ、こちらも想定通りではあるが、カナダ中銀は利上げサイクル終了を明確に示唆はしてない。カナダ中銀は声明で「追加利上げの必要性を“検討”している」と述べるに留まっている。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美